架空の球を追う   ユニーク……の一言では片付けたくない何かがある(笑)

架空の球を追う

架空の球を追う


森絵都さんといえば僕は「カラフル」が印象に残っていて、、というよりも中学時代のバイブルと言っても良いくらいですね(笑)あの中学校の図書室にある「カラフル」を借りた回数は歴代№1でしょう……まぁそれくらい心に響いたんですね。それが強すぎたので他の森絵都作品になかなか手が伸びなかったのですが、最近になってちょこちょこ読むようになりました。。と言っても今回の「架空の球を追う」を入れても三冊ですけどね。



それでこの「架空の球を追う」という短編集ですが、、良かったです。優しい人なんでしょうね森絵都さんは……スゴく温かい話でした。正直言って、全部が全部何が起こるでもない話です……特に劇的なことが在るわけでもなく、、なんてことのない普通の風景です。表題作の「架空の球を追う」なんて少年野球の子供たちがフライを獲る練習をしているのを、その母親たちと一緒に見ているだけの、、ただそれだけの、たった7ページのお話です。でもそれが、沁みるなぁ……なんてことのない日常の中にも、やっぱりなんてことのない劇的な一瞬があるんですよ。なんてことのないその一瞬が人生を決定づけることもあるし…そしてそういう劇的な一瞬があっても、のんびりと続いていく日々というものの豊かさが感じられました……ホントに良かったです。



なんとなくされ竜を思い出しました。あれは悲劇的なことが日常になってしまっていることを描いてますよね。。どれだけ悲劇的なことが起こってもそれはもう普通の日常なんですよ。

されど罪人は竜と踊る 1 ~Dances with the Dragons~ (ガガガ文庫)

されど罪人は竜と踊る 1 ~Dances with the Dragons~ (ガガガ文庫)


され竜は、その悲劇的な日常をだから精一杯ガンバレ!という話だと僕は思っています(笑)浅井ラボさんもザスニの対談企画で「され竜は応援歌のつもり」と言っていたのでそう間違ったことは言っていないでしょう……なんとなくですが、両作品はレイヤーは違ってもベクトルは同じなような気がします。。森絵都さんは内臓だとか脳漿だとかは書いていませんけどね(笑)